よく街中で見かける「居住者用車両を除く」の標識のある道路は、タクシーで実車中や迎車中に進入して良いのでしょうか?
私はお客様がその区域に住んでいるのだから,当然進入して良いものだと思っていました。
ただし道交法の条文を見るとそうとは言い切れない。
むやみに進入して捕まってしまう心配はないの?
今回はこの問題を深堀してみます。
実際にはこのような標識です。
東京でタクシー運転手をして12年になりますmasaki(masakitblog2020)です。
今回は疑問に思ったので警視庁の交通相談センターに、「居住者用車両を除く」の交通規制についてと、合わせてよく取り締まりされている「スクールゾーン」の規制についても問い合わせてみました。
タクシー運転手として交通違反して点数を取られてしまうことは死活問題です。
あらためて決着をつけて、不安を払拭してみましょう。
結果としては進入してよい
結論から言うとお客様が規制された「地域に住まれている」とき、タクシーでお客様を「お送りする」「お迎えに行く」場合は進入して良いとのことです。
電話した先は警視庁の交通相談コーナー(03-3593-0941)です。
でも腑に落ちない所が、その根拠。
道交法の通行禁止の項目はこのようになっています。
第八条 歩行者又は車両等は、道路標識等によりその通行を禁止されている道路又はその部分を通行してはならない。
2 車両は、警察署長が政令で定めるやむを得ない理由があると認めて許可をしたときは、前項の規定にかかわらず、道路標識等によりその通行を禁止されている道路又はその部分を通行することができる。
3 警察署長は、前項の許可をしたときは、許可証を交付しなければならない。
4 前項の規定により許可証の交付を受けた車両の運転者は、当該許可に係る通行中、当該許可証を携帯していなければならない。
5 第二項の許可を与える場合において、必要があると認めるときは、警察署長は、当該許可に条件を付することができる。
6 第三項の許可証の様式その他第二項の許可について必要な事項は、内閣府令で定める。
(罰則 第一項については第百十九条第一項第一号の二、同条第二項、第百二十一条第一項第一号 第五項については第百二十一条第一項第一号の二)
(歩行者用道路を通行する車両の義務)
電子政府の総合窓口e-Govより
抜粋すると通行禁止地域に進入する場合には、警察署長の許可証が必要で許可証を携帯する必要があると明記されています。
額面通りにとらえると許可証を持っていないタクシーは通行不可となります。
ただ「居住者用車両を除く」の規制は、あくまでも規制地域をつくることでむやみやたらに通り抜けする車両を抑止する効果をねらって設置されたものだと考えられます。
道交法の条文を引用した話を持ち出して聞いてみると、実際その様なニュアンスが話の節々に見えかくれします。
住宅街のなかでの騒音問題や、交通事故を減らすための抑止効果。
そのため大々的に通行可能のアナウンスしてしまうと、違反車両が増えて抑止効果が無くなってしまいます。
いったん規制区域に入ってしまえば、詳しく調べない限り居住者の知り合いか、何か物を届けにきた配達の車か、はたまたただ単に抜け道で通り抜けただけの違反車か見分けがつきませんよね。
しかし運転をすることで生活しているわれわれタクシー運転手は、違反がつみかさなるとハンドルを握れなくなってしまいます。
もっと明文化してはっきりとしてほしいのが正直な印象です。
確かにタクシーの仕事を10年以上していますが、違反をして取り締まられたという話は聞いたことがありません。
さらに話を聞いてみると、もしも違反して「居住者用車両を除く」で事故を起こしてしまった場合、重加算されて罰則が適応される可能性があるとのことです。
抜け道だからといって通り抜けして事故を起こしてしまった時には違反点数と罰金が加算されるおそれがあるのです。
さらに地域の住民の方からの苦情にもつながりかねません。
「居住者用車両を除く」の地域に進入する場合は、お客様をお送りする際とお迎えに行く場合のみにとどめましょう。
西麻布3丁目付近の通り抜けについて
「居住者用車両を除く」の標識にまつわる話題として、タクシー会社から通行しないようによく注意喚起される場所があります。
西麻布3丁目付近のギリシャ大使館の角をまがり信号待ちを回避する箇所です。
外苑西通りからテレ朝通りに抜ける一方通行の道で道幅はせまいながらも交通量の多い通りです。
突き当りまでいかずにギリシャ大使館の角を曲がると、信号待ちを回避できるのです。
ギリシャ大使館の角を曲がった先が「居住者用車両を除く」の規制地域です。
特に夕方など信号でまたされるため渋滞し、ギリシャ大使館の角を曲がると時間短縮になります。
お客様から「居住者用車両を除く」の標識のあるギリシャ大使館の角を曲がるように指示される場合もありますが、通り抜けするのは交通違反になります。
タクシー会社から通達が来るという事は周辺の住民の方からの苦情があったものと思われます。
所属しているタクシー会社の心象が悪くなりますし、万が一事故を起こしてしまった場合、交通違反のペナルティーが課せられる可能性もあります。
お客様から「居住者用車両を除く」の地域を通り抜ける指示があった場合、事情を説明して正規の信号から右左折しましょう。
スクールゾーンの場合は?
今回の件で警視庁に問い合わせて思ったのが、「スクールゾーン」についてはどうかという事です。
同じ進入禁止のカテゴリーに属し、「スクールゾーン」については都内のあちらこちらで取り締まりを行っている為です。
結果は道交法の条文にもあるように、例えお客様がスクールゾーン内に居住されていても進入できません。
スクールゾーンの規制時間内に通行できるのは、やむを得ない理由で通行を認められた通行許可証を携帯した、当該車両に限ります。
ただし例外があります。
それは体に障害をお持ちの方が通行証をもっている場合です。
体に障害をお持ちのかたが申請できる通行証とは
体に障害をお持ちの方はタクシーなどを利用する際、車両をを特定しなくても進入禁止の通行許可証を申請できます。
通行禁止道路の通行許可を申請する際は、事前に使用する車両及び主たる運転者を特定していただく必要がありますが、身体の障害のある方が、タクシーや知人等の車を利用する場合など、事前に使用する車両及び主たる運転者を特定できないやむを得ない理由がある場合においても、下記のとおり通行許可を申請することができます。
石川県警ホームページより
スクールゾーンで通行許可証を持っているお客様をお乗せしていて、警察官に止められた時の対応方法
実車の場合
通行許可証をお持ちのお客様をお乗せしてスクールゾーンで警察官に止められた場合は、お客様に通行証を提示してもらいます。
迎車の場合
では迎車でお迎えに行く場合はどうしたらよいのでしょう。
警視庁のかたに伺った所、お客様にタクシーを依頼する際に通行証の番号を伝えて頂く必要があるとのことです。
迎車で進行する際に警察官に止められたら、通行証の番号と、お客様の氏名、後はタクシーの依頼があり迎車で進行している旨を説明すれば通行できるとのことです。
まとめ
同じ通行禁止のカテゴリーであっても、規制に「弱い規制」と「強い規制」が実際にはあります。
その基準は本来の意味での抑止効果などもあり明確には示されていませんが。
特に今回で言えば「居住者用車両を除く」は弱い規制で「スクールゾーン」については強い規制です。
本来なら最寄りの警察署から通行許可証を発行された当該車両のみ通行可能となりますが、「居住者用車両を除く」については「弱い規制」のためと思われ、通行しても良いとのことでした。
また居住者用の「用」の部分だけで考えてみても、郵便配達のバイクからピザの配達、そしてわれわれタクシーに全て許可証を発行するとなると事務作業だけでたいへんな作業になりますよね。
「スクールゾーン」などの強い規制では違反即取り締まりの対象となります。
進入禁止の運転者への罰則は2点と普通車なら罰金¥7,000です。
ただし体に障害をもったかたで通行規制地域に用事がある場合や居住されている場合、あらかじめ車両を特定することなく通行証を申請できます。
通行証を持っているお客様の場合には例えスクールゾーンでもタクシーで進行可能です。
またお迎えに行く場合にはあらかじめ通行証の番号とお客様の名前を伺っておく必要があります。
今回は冒頭のツイッターの件から「居住者車両を除く」の規制と合わせて「スクールゾーン」の規制についても深堀りしてみました。
実際に道交法に明確に記載されてないため迷う部分もあります。
しかし「居住者用車両を除く」の標識がある場所は広範にわたり、進入できないとなるとわれわれの仕事にもお客様にも多大な影響をおよぼします。
あくまでもお客様をお送りする時とお迎えに行く場合のみに通行するのはとどめて、間違っても抜け道のため通行するようなことのないように心がけましょう。
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